三豊・観音寺市医師会


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■大腸癌〈検査のはなし〉
大腸癌は増え続けている

厚労省の統計を見ても明らかなように、大腸癌患者数は年々増えています。(胃癌は依然多いですが増加はしていません)

死亡率でみても大腸癌(茶色の線)は男女ともに増加の一途です。
生活の欧米化等が原因と分析されていますが、喫煙や便秘等の要因も関係しているようです。

癌は予防できない

【癌を完全予防すること】は現時点ではできません!(「ならないようにする」積極的予防はできないんですが、増やす要因はいくらもあるのが皮肉なところです。せいぜい「なりやすくしない」という消極的な予防が精一杯なのです。)
生活習慣の改善で予防が可能な「生活習慣病」との大きな違いがここです。
完全に防げない以上、いかに早いうちに発見し、命に関わりのないうちに治療できるかが重要になってきます。

そのための検診

そこで「大腸癌検診」が出てくる訳なのですが、現在ひろく行われている【便潜血】(糞便中の血液成分を検出する検査)については誤解が多いようです。
この検査は正確には【大腸癌の精密検査を要する人を見つけるための検査】なのです。
つまり「陽性」と言われたらすぐさま精密検査(つまり大腸内視鏡検査)が必要ということが分けるだけで、決して「陰性だから安心」という類のモノではありません。何回陰性がでても「大腸癌でない」とはいえない検査なのです。
通常「二日法」といって2日分の便から潜血反応をとりますが、この結果【1回でも】陽性が出た人はすぐさま大腸内視鏡検査を受けるというのが正しい理解です。「もう一回便の検査を」なんてナンセンスなのです。
じゃあなんで便潜血検査をしているのかというと、【拾い上げ】の検査として行うならば医者がいなくても検査可能ですし、危険や苦痛もなくお手軽で費用も安いことから採用されているわけです。ただし上述のように、あくまで【拾い上げ】の検査なので【精密検査】の代用ではありません!
大腸癌は増え続け、大腸癌で亡くなる人も減っていないという事実があるのはたしかです。
これは検診・検査が充分なされていないことに加え、正しく理解されて運用されていないことにも一因はありそうです。

だから内視鏡

大腸癌を早期発見する切り札は何といっても【大腸内視鏡検査】です。

胃カメラは食べ物が自然に通過する方向に器械が入りますが、大腸では逆の方向に挿入していくことになります。加えて大腸は固定されていない(ぶらぶらの)部分がおおく、ここを伸ばさないように挿入するのにそれなりの技術を要します(過度に伸ばされると検査を受けている人は苦痛を感じます)。特にS状結腸や横行結腸は固定されていない部分がほとんどのため、苦痛を少なく検査するためにはこういった箇所を【腸を伸展させないで】内視鏡を進める技術が求められます。

また観察のために腸内に空気(施設により二酸化炭素のこともある)をいれて膨らませるので、おなかが張って苦しい感じがすることもあります。
総じて決して楽な検査ではないのですが、昨今は検査をする医師の技術向上・検査機器の改良等で一昔前よりはずいぶん楽に、短時間で検査が出来るようになりました。

また「意識下鎮静法」といって【少しうつらうつらしているが、話は出来たり、酷く痛かったりするとわかるぐらいの状態】で検査することも行われています。
苦しいっていっても、癌で開腹手術を受けるよりはましだと思います。
また最近の研究により「平坦な大腸ガン」が意外に多いということがわかりました。
残念なことに 「平坦な大腸ガン」は便潜血検査でも陰性のことが多く、バリウム検査ではわかりにくいのです。
またバリウムで病気が見つかった場合は結局、内視鏡をやり直すことになります。内視鏡で1回の検査ですましてしまうのが理想です。また小さなポリープならばその場でとってしまうことも可能です。内視鏡検査は診断・治療も兼ねる事がある非常に優れた検査法と言えます。
検診で潜血反応が1回でも陽性だったら必ず内視鏡検査を受けましょう!!

大腸がんの初回検査(内視鏡)は40代で受けるのが望ましい。

こんな調査分析を米国・コロンビア大学のアルフレッド・I・ニューガット教授らが報告しています。
大腸がんにかかった、40代と50代の患者様の大腸内の写真を分析した結果、検出された腺腫(良性だけれど将来がん化する可能性のある隆起物のこと)は、両方の年代でほぼ同率でした。
一方、進行がんは50代で倍になっており、40代で見られた腺腫が悪性化していった可能性が高い、ということがわかりました。
同教授は、「悪化して大腸がんに進行する腺腫は、40代で形成されている。だから、大腸がんの検査(内視鏡)は40代に受けた方がいい」と内視鏡による大腸がんの40代検診を勧めています。

検査の限界

いかに内視鏡検査が優秀とはいっても「未来の病気」まで見えるわけではありません!
今回は問題なくても、それはあくまで「検査時点まで」の安心が得られたわけで、向こう何年も安心なわけではありません。
運良く全く所見がなければ、次の年からはまた便潜血検査でいいかもしれません。
しかし、ポリープや腺腫が見つかった方は、必ず医師の指示通り定期的な内視鏡検査を受けましょう!
また、便秘などの症状がある人や近親者に大腸癌の方がいるひとは、積極的に内視鏡検査を受けた方がいいと思われます。
また「もう年だから、癌の検査はもうええわ」と仰る方が時々いらっしゃいます。

このグラフをご覧になれば、気が変わるかもしれませんね。
40代の後半を境に大腸癌は「爆発的な加速」で率が増えます。つまり【高齢者ほど大腸癌の検査は重要】なのです。「癌で死なない」為には高齢の方ほど検診・検査を受けないと駄目なんですね。