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■痛風だけじゃない!? 「尿酸」のちょっと怖いお話

みなさんは「尿酸」ということばからどんな病気を思い浮かべられますか。よく知られているのは高尿酸血症が原因で起こる関節炎「痛風」ではないでしょうか。それ以外にも「尿管結石」で高尿酸血症を指摘された方もおられるのではないでしょうか。成人男性の約20%が「高尿酸血症」であると考えられています。
しかし、最近になって「高尿酸血症」が「メタボリックシンドローム」と密接な関係にあることがわかってきています。

「メタボリックシンドローム」とは動脈硬化を起こしやすい要因を複数もっている状態のことです。健康診断などで腹囲を測定するようになって、皆さんもきっと耳にしたことがあると思います。複数の要因とは「肥満」・「脂質異常」・「高血圧」・「耐糖能異常」などです。そしてこの四つと「高尿酸血症」に関連があることがわかってきています。

1)肥満と高尿酸血症

体重増加に伴い血液の尿酸値は上昇し、減量で尿酸値が下がることは以前から確かめられています。 内臓脂肪が蓄積すると尿酸産生が促進されることや、内臓脂肪が増えることで「インスリン抵抗性」(インスリンが効きにくくなること)となり、腎臓での尿酸の排泄が低下することが原因だと考えられています。

2)脂質異常と高尿酸血症

特に中性脂肪が高い「高トリグリセリド血症」の方は体重とは関係なく尿酸値も高くなることがわかっています。 肝臓で中性脂肪の原料となる脂肪酸の合成が促進すると、尿酸の原料であるプリン体の合成も同時に促進されるためだと考えられています。

3)高血圧と高尿酸血症

高血圧と高尿酸血との関連はかなり以前から指摘されています。高血圧の方の20〜40%で尿酸値が高く、痛風の方の約30%の方で血圧が高いと言われています。 高血圧になると腎臓の血流量が減少し腎臓内に乳酸が増えると、尿酸を尿に排泄する機能が低下し尿酸値が上がると考えられています。

4)耐糖能異常と高尿酸血症

血糖値が正常からやや高値に上昇すると、尿酸値も上昇します。 肥満のところで説明した「インスリン抵抗性」が原因で血糖値と同時に尿酸値も上昇すると考えられています。

以上のように、動脈硬化が進みやすい状態では尿酸値も高くなりやすいのです。 さらに、「高尿酸血症」自体が動脈硬化の原因であると考えられるようになってきています。 動物実験などで、血管のもっとも内側にある内皮細胞に尿酸がとりこまれると、酸化ストレスが発生し、血管壁を傷害して動脈硬化の原因となると考えられるようになってきました。

以上のように、「尿酸」は動脈硬化と関係が深いことがわかってきています。ところが、特定健診の項目には尿酸値は今のところ入っていません。また、病院や診療所の検査でも検査項目に尿酸値が入ってないことがあります。

皆さんはご自分の尿酸値をご存じでしょうか?病院や診療所で受けた検査結果を見直してみてはいかがでしょう。もし、まだ尿酸値を測ったことがないようでしたら、一度血液検査を受けるときにいっしょに調べてもらってください。

では、もし尿酸値が高かったらどうしたらよいのでしょうか。まずは生活習慣の見直しをしましょう。基本は、飲酒制限・肥満の解消の2つです。

ビールや蒸留酒、特にビールは多く飲めば尿酸値も上昇しますが、ワインでは尿酸値は上昇しません。これは尿酸の原料となるプリン体の含有量と関係しています。ただし、プリン体の少ないアルコール飲料でも、たくさん飲むとアルコールには体内で尿酸を増やす働きがあります。飲酒量の目安としては、1日に日本酒1合、ビール500ml、ウイスキーダブル1杯、ワイン200ml程度のいずれか程度です。また、毎日飲酒する方は飲酒回数もへらす必要があります。

肥満のかたは、体重を減少させることで尿酸値を下げることができます。適度な運動と食事などのカロリーの見直しをしましょう。食事で尿酸値を下げるのはなかなか大変です。動物の内臓や魚の干物などが、尿酸の原料となるプリン体を多く含みますので摂取を控えていただければと思います。 また肉や魚などの動物性たんぱく質は尿酸値を上昇させますが、乳製品は尿酸値を低下させます。タンパク質の摂りかたにも工夫をしてください。

次のような方は、いままで痛風にかかってことが無くても尿酸値を8mg/dl以下にすることが望ましいとされています。

  • 健診でメタボリック・シンドロームやその予備軍と指摘された方
  • 高血圧症・糖尿病で治療を受けている方
  • 狭心症や心筋梗塞になったことのある方

もし生活習慣を改善してもなお尿酸値が下がらないときは薬の助けをかりて尿酸値を下げましょう。