三豊・観音寺市医師会


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■婦人科手術について

女性特有の病気のうち、摘出手術が必要になる代表的な疾患は、子宮癌・子宮筋腫・卵巣癌・卵巣嚢腫・子宮外妊娠などが挙げられます。これらの手術は大きく分けて、①開腹手術(経腹)と②膣式手術(経膣)及び③腹腔鏡手術があります。①開腹手術は、その名の通り下腹部を縦切開あるいは横切開することにより腹腔内に達し、直視下で患部を取り除く方法で、古来から行われている手術です。②膣式手術とは婦人科特有の手術であり、一般の外科医がほとんど手を付けることのない手術です。これは女性が出産する時に胎児の通り道となる膣の一部(約3〜5cm)を切開して腹腔内へ到達し、その限られた切開創から手術操作を行う方法です。この手術もかなり古くから行なわれており、その起源は19世紀初頭と言われています。③腹腔鏡手術は近年、医療機器の急速な進歩と共に広く普及している手術です。腹壁の数か所に小さい穴(孔)を開け、そこから腹腔鏡や操作器具を挿入して腹腔内の操作を行うというものです。操作は全て二次元モニターを見ながら行います。最近は、これよりもさらに進化したロボット支援手術というものが登場しました。これは腹腔鏡による手術操作をコンピュータにより精密に制御された医療機器da Vinciを用いた遠隔手術です。

以上、婦人科で現在行われている手術方法を列挙しましたが、これらの手術にはそれぞれに利点と欠点があります。以下、簡単に説明します。

  1. 開腹手術

    手術の基本であり、直視下に確認しながら行える術式であるために、高額な医療機器を必要とせず、又熟練した医師が不在の場合も可能であり最小限の医師数(手術によっては1人でも)で行え、一般の医療機関でも可能な術式であります。さらに手術時間も短く、手術費用も安価であるという利点があります。反面、術後疼痛が強く腹壁に瘢痕を残す、何よりも入院期間が長いなど他の手術に比べて侵襲が大きいという欠点があります。

  2. 膣式手術

    膣内から腹腔へ到達することから開腹・閉腹の操作がないため、開腹手術よりもさらに手術時間が短い上、腹壁に全く創部痕を残さず、術後疼痛も少ない低侵襲の手術です。入院日数も開腹手術よりは短期間となります。しかし、狭い手術野での操作を余儀なくされますので、技術的に難しく確実性に不安があるという面も否定できません。又、手術可能な疾患(適応)も限定されるのも事実です。

  3. 腹腔鏡手術

    この術式は、治療はもとより確定診断を行うという面でも利用価値があります。腹腔に開けた小さい孔(1〜数個)から腹腔鏡や器具を挿入するのみであるため、腹壁痕が小さく術後疼痛も軽い上に何よりも入院期間が非常に短いという利点がます。欠点としては、手術時間が長く(場合によっては10時間以上にも及ぶ)全身麻酔下での操作が一般的で、しかも高価な医療機器を要することから手術料が高額となるだけでなく、熟練した技術と経験を積んだ医師が必要であることが挙げられます。従って、一般の診療所での手術は難しく、限られた病院のみで行われるということになります。

以上、婦人科の代表的な手術に対して、その手技とそれぞれの利点・欠点について述べましたが、最終的にはその手術を受ける側(患者)の選択が最も重要だと思われます。

まず、手術が必要な疾患かどうかを判断することから始まります。もし必要があると判断したならば、次にその疾患に対する手術はどれがふさわしいかを決めることになります。それには、疾患の種類・程度・癒着の有無に加えて手術を受ける患者本人の背景も評価しなければなりません。たとえば年齢や体重(手術には重要な因子なのです)、性経験や出産の有無、挙児希望があるかどうか、又、全身的な他の疾患に罹患していないどうか、手術に要する費用や休養期間などの社会的要因、そして何よりも本人の意向はどうなのかが大切になります。判り易く言えば、自分のかかっている疾患と自分の環境、そして自分の意向を加味して受ける治療法を決定すれば良いということなのです。つまり、医師に提示された情報をもとに自分の事は自分で決めることが原則なのです。

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